前回の記事では、SOLEIAのトップページで、WordPressとAstroの表示速度を比べました。同じ条件で測った点数(測定ツールのLighthouse)は、WordPressが74点、Astroが76点。ほとんど差がありませんでした。実際の訪問者の体感までは、確かめていません。
では、点数に差がないなら、Astroに変える意味はないのでしょうか。
調べてみると、点数以外のところに、Astroならではの良さがありました。一方で、向き不向きもあります。企業のご担当者が気になる「維持費」「保守」「更新」を中心に、整理してみます。
Astroに移行するメリット
WordPressは基本的に、アクセスに応じてサーバー側でページを生成します(生成したページを保存して配信する、キャッシュという設定もあります)。一方、今回比較するAstroは、公開前にページを生成しておく構成です。この違いが、次の良さにつながります。
ページが表示されるまでの違い
- 見に来たとき見に来た人が、ページを開く
- 見に来たときサーバーが、ページを組み立てるアクセスに応じて行う
- 見に来たときページが表示される
- 公開の前ページを先に完成させる更新したときに行う
- 公開の前完成したページを置いておく
- 見に来たとき見に来た人に、そのまま渡す組み立ては不要
- サーバー代を抑えやすい完成したファイルを置くだけなので、無料や低価格の置き場所でも運用できます。
- 保守の手間が減る部分があるサーバーの中でプログラムやデータベースが動かず、管理画面もありません。WordPressで手間になりやすい、プラグインやPHPの更新確認が要らなくなります。
- 攻撃を受ける入口が少ないログイン画面やプラグインがない分、狙われる場所が少なくなります。ただ、管理がなくなるわけではありません。ホームページのセキュリティ対策7項目を、チェックリストにまとめました。
- 表示速度の測定スコアは、今回の検証ではほぼ同じ結果でした前回の記事のとおり、Mac上のLighthouse(スマホ向け条件)で測ると、74点と76点でした。実際の訪問者の体感までは、確かめていません。
- CMSを組み合わせれば、担当者が更新できる仕組みを作れます更新用の管理画面(CMS)をつなげば、お知らせや営業時間などを、担当者が管理画面から直せるようにできます。くわしくは、後の章で書きます。
維持費の比較
今回確認したサービスを使った、モデルケースです(2026年10月時点・日本円は税込・無料枠に収まる前提)。
※サーバー代は、無料枠に収まる前提の金額です。ドメイン代は別にかかります。
サーバー代だけを見れば、Astroのほうが安くなる可能性があります。差は、年に1万円前後です。ただ、移行の費用や、保守・修正の依頼にかかる費用まで安くなるとは限りません。たとえば、WordPressなら担当者が管理画面で直せたことが、制作会社への依頼に変わると、依頼のたびに費用がかかる契約では、サーバー代の差を超えることもあります。
また、無料プランには利用条件があります。今回調べたCloudflareとmicroCMSでは、企業のサイトで使えるかどうかを、公式の文書から判断できませんでした。契約の前に、各社へ確認しておくと安心です。なお、Astroを開発する会社は2026年1月にCloudflareに加わっていますが、Astroは他のサービスにも置けます。
Astroのデメリット
- 更新には、ファイルの編集と公開の作業が必要です文章や写真を変えるたびに、ファイルを直して公開する必要があります。専門的な知識がいるため、制作側に依頼する形が多くなります。次の章のCMSで、担当者が更新しやすくなります。
- フォームなどの機能は、別に用意が必要です静的なサイトだけでは、お問い合わせフォームの受け取りができません。外部のサービスを組み合わせます。予約・会員・ECなどの機能を利用する場合は、外部サービスとの連携や追加開発が必要になることがあります。すでにWordPressで運用している場合は、移行後も同じ機能を使えるか、事前に確認することが大切です。
- 保守がゼロになるわけではありませんプラグインの更新はなくなる一方で、Astro本体や部品の更新が入ります。大きな更新では、手直しが必要になることもあります。私が前回の検証で作ったAstro版も、手元の環境の都合で、新しい版が動かず、ひとつ前の版に固定しています。
- 移行の作業がありますURLの引き継ぎ、メールの届き先の設定(DNS)、アクセス解析の設定などです。特に、ドメインのDNS(インターネット上の住所の管理)をCloudflareに移す場合は、メールを届けるための設定も、同じ内容で登録し直す必要があります。メールサービス自体を変えるわけではありませんが、登録が漏れると、メールが届かなくなることがあります。
CMSで更新できること
CMS(更新用の管理画面)を組み合わせれば、Astroでも、担当者が更新できる仕組みを作れます。たとえばmicroCMSなら、次のようなイメージです。
お知らせを追加してから、ホームページに出るまで
- 担当者管理画面でお知らせを追加
- 担当者公開する
- 自動サイトが作り直される自動化の設定をした場合
- 自動ホームページに反映される
- 営業時間を直す管理画面の「店舗情報」を開いて、営業時間の欄を書き換え、公開を押します。
- お知らせを追加する新しいお知らせを作り、タイトルと本文を入れます。下書きで確認してから公開できて、公開の日時を決めておくこともできます。
- 写真を差し替える写真の欄に新しい画像を選んで、公開します。
操作の感覚は、WordPressの投稿画面に近いものです。ただし、これは公式の説明をもとにしたイメージで、実際のサイトで運用したものではありません。
知っておきたいことが、3つあります。
更新できる範囲は、制作のときの設計で決まります。WordPressでは、テーマや設定によって、管理画面から文章や画像を編集できます。CMSでは、「ここは更新できる」と決めて作った項目だけが、管理画面に並びます。たとえば、トップの大きな写真を自分で替えたいなら、最初にその項目を用意しておく必要があります。
公開してから反映されるまで、少し待ちます。サイトを作り直してから公開する仕組みだからです。作り直しを自動で行うには、最初に設定が必要です。反映されなかったときに、誰が確認するのかも決めておくと安心です。
無料のCMSでも、最初の設定と運用の作業は必要です。無料プランのあるmicroCMSや、無料で使えるDecap CMSも、更新できる項目の設計、サイトとの接続、担当者のアカウントの用意が欠かせません。「無料」なのは利用料で、導入や運用の手間までは無料になりません。
どんなサイトに向いているか
Astroが向いている
- 会社案内やサービス紹介が中心で、更新が年に数回のサイト
- 1ページの案内(LP)
- お知らせが月に数回あり、CMSで担当者が更新するサイト
WordPressが向いている
- ブログやお知らせを、頻繁に更新するサイト
- 複数の担当者で更新するサイト
- 予約・会員・ECなどの機能を使っているサイト
まとめ
Astroは、サーバー代を抑えやすく、保守の手間が減る部分もあり、CMSを組み合わせれば担当者が更新できる仕組みも作れる、魅力のある選択肢です。ただ、移行や保守の費用まで安くなるとは限らず、フォームなどには別の工夫が必要です。一方でWordPressにも、更新のしやすさや機能の豊富さという強みがあります。
どちらが良いかは、サイトによって変わります。大切なのは、仕組みの名前で選ぶのではなく、「そのサイトで何を大事にしたいのか」から選ぶことです。更新の頻度、更新する人、必要な機能、かけられる費用。これを整理すると、合う仕組みが見えてきます。今のままで十分なこともあれば、見直すことで楽になることもあります。
表示の遅さが気になっている場合は、前回の記事のとおり、測定上の遅さの原因が、仕組みではなく、フォントや計測用のタグだったこともあります。仕組みを変える前に、原因を調べておくと安心です。